上顎右側第一小臼歯にクラックが入っていた症例
投稿日:2017年6月6日
カテゴリ:未分類
つめ物が外れたとのことで来院・・・
右上のつめ物が外れてしまったとのことで来院された患者さんです。口腔内を見ると上顎右側第一小臼歯(右上の真ん中らへんの歯)のインレー(つめ物)が外れていました。
実際の写真です。内部も虫歯になっていたので、患者さんに説明し、感染している歯の部分を取り除きました。
虫歯を取り除き、虫歯を検知する赤い液体で染め出すと、歯の中央にクラック(ヒビのこと)が入っているのがわかります。
虫歯は取り除きましたが、少しヒビは残っています。わざと残しています。なぜなら、これ以上ヒビを追っていくと、歯を残せなくなるほどの量を失ってしまうからです。
この状態のまま、コンポジットレジンにて土台を建てました。
土台を建てたあと、クラウンを装着するため、マイクロスコープを用いて支台歯形成を行いました。
これが支台歯形成が完了した状態です。
実際の治療の動画を提示致しますので、ご覧ください。
今後起こりえるリスク
まず虫歯が大きかったため、歯髄がダメージを受けている可能性があります。そのため、処置後に痛みが出る可能性があります。また、仮に起こらなかったとしても、痛みが出ないまま、歯髄が死んでしまい、根の先に炎症を起こす可能性があります。
さらに、困ることは、クラックを残していることです。このクラックが広がらないよう、クラウンを装着し、歯を補強しますが、これでも補強しきれずに、クラックが広がり、歯に負担がかかる可能性があります。
なぜこのようなことが起こったのか?
では、なぜこのようにクラックが入ってしまったのか?それは、大きいインレーを装着しているからです。インレーを装着すると、歯の量は残る、つまり、多くの歯の量を削らずにすみますが、逆に中途半端に歯が残るため、強度が弱まります。このような状態の歯に噛む力がかかると、その力に耐えられず、歯が壊れていきます。今回の症例では、量を中途半端に残してしまったこの歯に、強い力が加わり、結果、クラックが入ってしまったのです。
この症例から伝えたいこと
最近、このような患者さんが増えてるような気がします。「歯をなるべく削りたくない・・・」お気持ちはよくわかります。我々歯科医師も患者さんの歯を無駄には削りたくはありません。しかし、治療の目的を考えて欲しいのです。それは「治療した歯の寿命を延ばす」ことです。決して「歯の量を多く残す」ことではありません。
自分の治療では、治療している歯を最大限に保存した方が良いケースは多くあります。しかし、中途半端に残したために、問題が起きる可能性もあるのです。
虫歯や、以前に装着されていたつめ物が大きい理由から、量が中途半端に残っている歯は、量を保存するよりも、全周形を整えて、精度の高いクラウンを装着した方が歯が長持ちすることが多いのです。
柳沢歯科医院
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